2025年問題を乗り切るために


日本の社会の問題・課題として挙げられることのひとつが、高齢化問題です。
日本は、WHO(世界保健機構)によれば「超高齢社会」であると分類されているほど、高齢化が進んだ国です。
もはやわたしたちだけではなく、世界の問題として捉えられてきている問題なのです。
なかでも近年、「2025年問題」として指摘されていることについて、考えてみたいと思います。

2025年問題とは

どのような問題なのか?

「団塊の世代」と呼ばれる世代があることはご存知だと思います。
1947年~1949年の3年間に生まれた人たちのことを指していると定義されていますが、この世代は太平洋戦争終戦から2~4年後の「第一次ベビーブーム世代」とも呼ばれる世代で、たくさんの子どもが生まれた時期でした。

この世代の人たちが2025年までに75歳(後期高齢者)を迎えるというのです。
この世代はこれまでこの国をつくってきた世代でもあります。
そうした人たちが一挙にさまざまな給付やサービスを受ける側にまわることで、医療や介護、年金などの医療費や社会保障費が急増し破綻を招くのではないかといわれているのです。  

高齢者人口の推移

これまでにも高齢化問題は取り沙汰されてきましたし、多くの人が注視してきたと思います。
これまで問題とされていたのは、高齢者人口が増えるスピードでした。
しかし、団塊の世代が65歳(高齢者)を迎えた2015年頃からは、高齢者数の多さが問題となり、高齢化問題は新たな段階へと進んだことになります。

厚生労働省によると、2015年の75歳以上高齢者人口は1,646万人で全人口における割合は13.0%ですが、2025年には2,179万人、その割合は18.1%に増加すると予測されています。
2055年には2,401万人になり、その頃になると高齢者人口割合は26.1%とされています。
なんと全人口の4分の1以上が75歳以上の高齢者であるという、驚くべき予測がたてられているのです。
年齢の枠を “65歳以上” まで広げると、2025年には全体の30.3%が、2055年には39.4%が 「高齢者」 という見込みになっています。
実に、全人口の4割が高齢者になるのです。 高齢者数の増加だけでなく、出生数の減少や平均寿命の延伸などによって、年齢階層別の人口構造(人口ピラミッド)も大きく変化がみられています。

年齢階層とは一定の年齢で区切ったグループのことで、0~14歳を年少人口、15~64歳を生産年齢人口(現役世代)、65~74歳を前期老年人口、75歳以上を後期老年人口と呼んでいます。
これに対し、65歳以上の人1人を支える生産年齢の人が何人かご存知でしょうか。

その推移を見てみると、65歳以上の高齢者1人を支える精算年齢人口は、1990年では5.1人、2010年では2.6人でしたが、65歳以上が全人口の30%を占めるとされる2025年では1.8人と推計されています。
さらに少子高齢化が進むとされる2060年では、1人の高齢者を生産年齢人口1.2人で支えなくてはならないとされています。

こうなると人口ピラミッドの形にはピラミッド形は無く、後期老年人口から年少人口に向かって先が細くなっていく筒状の形をしています。
この形をみても年齢階層別の比率がバランスを欠き、高齢社会をはっきりと表していることがわかります。  

高齢者の世帯の見通し

では高齢者の世帯はどのようになっていくのでしょうか。
高齢者人口の増加は、高齢者が世帯主となる世帯数の増加にもつながります。

厚生労働省による報告では、2005年には全世帯数約4,904万世帯のうち、高齢者が世帯主となる世帯は約1,340万世帯程度だったのが、2025年の推計では全世帯数約4,964万世帯のうち約1,840万世帯程度になると見込まれています。
単純に計算すると、高齢者が世帯主となる世帯は、およそ20年間で500万世帯増えていることになります。

このころになると、高齢者の世帯のうち、高齢夫婦世帯のみの世帯は約609万世帯で、世帯主が高齢者の世帯全体の約33%、独り暮らし世帯が約680万世帯となり、世帯主が高齢者の世帯全体の約37%に達すると見込まれています。
これは世帯主が高齢者の世帯のうち、約70%を占めるという非常に高い割合となっています。  

2025年問題がもたらす影響

先にお伝えしたとおり、2025年には1.8人で1人の高齢者を支える社会がやってきます。
それは具体的にはどういう影響が出るのでしょうか。

高齢者医療費

<高齢者医療費の見通し>
人は年齢が上がれば病気にかかったり、ケガをしたりするリスクが増えるものです。
75歳以上の高齢者ともなれば、そのリスクはかなり上がるでしょう。
また75歳以上になると要介護率が高くなり、その3割が要介護状態になるとされていますから、その影響は深刻です。

国民医療費の推移・推計をみてみると、2015年度の高齢者の医療費実績は23.5兆円(うち後期高齢者は15.2兆円)で、医療費全体に占める割合は55%(うち後期高齢者36%)でした。
これが、2025年度推計によると、高齢者の医療費は36.7兆円(うち後期高齢者は25.4兆円)で、医療費全体に占める割合は約60%(うち後期高齢者44%)とされています。
この伸び率でいうと、高齢者医療費が1.5倍、後期高齢者医療費は1.7倍にまで急増するとされているのです。
医療費全体の伸び率が1.4倍であることを考えると、やはり高齢者医療費は驚異的な増加であることがわかります。

また、個人ひとりあたりの年間の医療費をみてみると、2015年度実績では前期高齢者が51万円、後期高齢者が95万円ですが、2025年度推計では、前期高齢者で2015年度比32.7%増の67万円、後期高齢者では2015年度比26.5%増の120万円とされており、これは現役世代の年間医療費と比べた場合、それぞれ3倍、5.3倍となっています。

医療費そのものも高齢者医療費の増大の影響を大きく受け増加の一途をたどっています。
2015年度は39.5兆円が2025年度には53.8兆円と推計されています。
高齢者増加が高齢者医療費の増加を招いていることは間違いなさそうです。

<医療保険費の財源>
ところで医療保険費は、患者負担分、保険料分、公費負担分の3つの財源によって負担されています。
患者負担分とは医療機関などの会計時に窓口で支払う分のことです。自己負担割合として年齢や所得などによって、2割または3割などの負担割合が決められています。

各人が加入している健康保険事業を運営主体である保険者が、加入者から徴収した保険料を財源にし、残りの割合分を負担します。
法律や国の予算措置に基づいて医療の全額または一部を、国や地方自治体が負担する制度があります。
これが公費負担分で制度ごとに実施主体が定められています。

たとえば、国家補償や健康被害救済の意味をもつもの、社会防疫的な意味をもつもの、児童福祉や障害者福祉などの社会福祉的な意味をもつもの、難病治療や研究を目的とするものなどがあります。
地方自治体でも独自に公費負担医療制度を実施しています。

たとえば、乳幼児医療費助成、子ども医療費助成、ひとり親家庭医療費助成などがあります。
なお、現役並みの所得ではない70~74歳の高齢者の自己負担割合を1割に軽減する特例措置をおこなっています。
本来の自己負担割合から軽減した分は、公費が負担しています。

2015年度から2025年度までの医療保険費の財源別の推移・推計にも高齢者医療費の増加の影響が出る結果となっています。
医療保険費全体として、39.5兆円だったものが14.3兆円増の53.8兆円になるとされ、なかでも、公費負担分が12.6兆円から6兆円(46%)増の18.4兆円、保険料負担は20.8兆円から7兆円(33.6%)増の27.8兆円とされています。
公費とはつまり国や地方自治体のお金です。国や地方自治体のどこからその負担分を持ってくるのか、必要になる分を確保することが急務となっています。

また、保険料とはつまり、加入者が各々の加入する健康保険制度の運営主体に支払っているお金です。
ここから負担する分が増えるということは、加入者の負担が増えるということです。
保険料負担増分をまかなえるだけの収入も増えれば問題ありませんが、それほど簡単なこととは思えません。

個々人の収入はもちろんですが、いわゆるサラリーマン等の会社員などが加入している被用者保険であれば、保険料は企業も負担しています。
保険料負担増は企業にとっても負担増です。
ですから、医療保険費の負担増は企業活動さえ圧迫する可能性があるのです。  

介護費の見通し

高齢者増加が影響することでもうひとつ忘れてはならないのが、介護に関することがらです。
特にその給付費についてみてみると、やはり医療費同様、増加の一途をたどっています。
2018年度実績で介護給付費は10.7兆円でしたが、2025年度には3.9兆円増の14.6兆円と予測されています。

社会保障には介護給付費以外にも給付があります。その割合が大きいのは年金給付費です。年金給付費の2018年度から2025年度の増加額は3.2兆円です。
基本的には一定の年齢を迎えれば給付されるのが年金給付ですから、高齢者数の増加が大きく影響することが想像できます。

しかし、その影響を超えた給付費増が介護給付費なのです。
また、子どもや子育てに関する給付費の増加額は2.1兆円と推計されていますから、わが国がいかに少子高齢化の影響を受けているのかがわかるというものです。  

2025年問題に対して

高齢者が急増することで、医療や介護の分野で大きな問題があることがわかりました。
ではその大きな問題に対してどのような対処ができるでしょうか。

 国・政府の施策

<地域包括ケアシステム>
国としてもただぼんやりと2025年が来るのを待っているわけではありません。
「地域包括ケアシステム」という言葉を聞いたことはありませんか。これが、政府が2025年問題を解決に 導くとし推進している取り組みです。

この仕組みについて厚生労働省は “2025年(平成37年)を目途に、高齢者の存減も保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築を推進している” としています。
高齢者の増加によって、今後は認知症高齢者の増加が見込まれます。地域包括ケアシステムは、重度の要介護状態の高齢者もこれまで暮らした地域で生活ができるよう、これまでバラバラになっていた住まい、医療、介護、予防、生活支援の5つの分野を一体化し、その人が暮らす地域全体で支えていこうとするものです。

特に、医療と介護の連携は大きな目標とされていて、体調がすぐれない時は地域のかかりつけ医や連携病院で医療サービスを、介護が必要になったらその人に適した希望する介護サービスを、互いに連携を取りながら迅速に受けることができるように体制を整えようとしています。
地域に暮らし医療や介護のサービスを受けながら、老人クラブや自治会、ボランティアやNPO活動など、これまでと同じように参加することもできますし、ゆくゆくは、在宅で医療と介護を同時に受けられようにすることを目指しています。  

<地域の特性に合わせた取り組み>
高齢化が進むスピードには大きな地域差があります。
たとえば、大都市部では、人口全体は横ばいですが75歳以上の人口が急増し、町村部では75歳以上人口の増加はゆるやかに進みますが、人口は減少しているというものです。
こうした地域差があるところに、全く同じように地域包括ケアシステムを構築していくのではなく、市町村や都道府県がその地域の特性に応じて作り上げていくことになります。
なお、地域包括ケアシステムは、必要なサービスの提供がおおむね30分内に提供されるエリア(地域の中学校区)をひとつの単位にすることが想定されています。  

わたしたちがやっておくべきこと

ちょうど団塊の世代がまさに現役世代でこの社会を支えていた時代は、まるで胴上げのようにたくさんの人で1人の高齢者を支えていました。
時代が進み騎馬戦型社会(3~4人で1人を支える)となり、2025年を過ぎ高齢社会のピークとされる2040年頃には肩車型社会(1人で1人を支える)になるとされますが、その肩車をするのはわたしたちになるのです。

しかし、肩車をする世代は少子化の影響でその人数は増えることはありません。
医療や介護分野はもちろん、あらゆる労働力不足が見込まれるため、それを補うために効率化や簡素化、AIなどの活用など人の手を使わないようにシフトする業種や職種が出てきたり、外国人労働者の活用も今後さらに進んでいくでしょう。

そんな時代を迎えたときに、わたしたちは仕事をして対価を得ているでしょうか。
その仕事が人の手でしかできない、人の手だからこその職で、知識やスキルに裏付けされたものであれば、他の何かや誰かにとって代わられたりすることはないのでしょう。

2025年まであと数年、高齢化を止めることはまずできません。
しかし、さまざまな社会の動きに目を向け、たくさんの情報に耳を向け、今からしっかり勉強していわば正しい現役世代になる準備はできるはずです。
たくさんの高齢者を支える人はわたしたちでしかなく、そしていずれわたしたちも、わたしたちの子供世代に支えられる側になるのです。      

参考
厚生労働省 今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像~
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/dl/s0927-8e.pdf
医療と介護を取り巻く現状と課題等(参考資料)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000167844.pdf
今後の高齢化人口の見通しについて
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-1.pdf
平成28年度 国民医療費の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/16/index.html   SCIENCE SHIFT Powerd bySAWAI
2025年問題の問題点と対策|厚生労働省/医療/看護/介護
https://tap-biz.jp/business/common-sense/1019205   BOXIL
2025年問題とは|超高齢社会で起こりうる問題とその対策 https://boxil.jp/mag/a3592/  
内閣府 平成30年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/zenbun/30pdf_index.html  
公費医療・難病医療ガイド 平成27年7月版
https://www.shaho.co.jp/shaho/shop/usr_data/sample/16411-sample.pdf  
内閣府 人口減少・高齢化の進展する中での 持続可能な経済財政の構築に向けて ~中長期展望と政策対応~ (参考資料)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0329/shiryo_04-2.pdf
2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)―概要―
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0521/shiryo_04-1.pdf  
 厚生労働省 地域包括ケアシステム
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/