生活習慣病とは何か?どうすれば防げるのか?


「生活習慣病」という言葉は、さまざまなメディアでも出てきますし、病院やクリニックなどでも啓発ポスターを目にすることがありますが、中高年がかかるものと思っている人も多いかもしれません。でも実は、そんな簡単なものでもないのです。

今回は、わたしたち栄養士の卵の目から見た、生活習慣病について、お伝えします。

生活習慣病 良く聞くけど何のこと?

まずは、生活習慣病の定義について見ていきましょう。

日本での定義

生活習慣病を一言で言えば「食習慣、運動習慣、飲酒、休養、喫煙などの生活習慣が、発症・進行に関与する疾患群」とされています。具体的には、次のような疾患が挙げられます。

  • がん
  • 脳卒中(脳梗塞、脳出血)
  • 急性心筋梗塞
  • 高血圧性疾患
  • 糖尿病
  • 腎疾患(慢性腎不全など)
  • 肝疾患(肝硬変など)

このうち、上から3つ(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)は、三大疾病ともよばれ、日本人の死因の上位を占める疾患群です。最近ではこのほかにも、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、歯周病、睡眠障害、骨粗しょう症なども、生活習慣病として挙げられることがあるようです。

生活習慣病はもともと、「成人病」と呼ばれていました。時代はかなり遡りますが、第二次世界大戦後の日本では、結核や肺炎などのいわゆる「うつる病気(感染症疾患)」に代わり、心疾患や脳卒中、がんなどの「年齢とともに増える病気(いわゆる成人病)」が急激に増えました。それに伴い、日本人の主要な死因も、感染によるものから、がんや心疾患、脳卒中などに変化してきました。

成人病は、「成人期になると発症が増える、あるいは進行する」という意味でこう呼ばれていましたが、その発症や進行には、生活習慣が大きく関係していることが分かってきました。つまり、ある日突然発症するのではなく、若いころからの不適切な生活習慣が積み重なることで、発症・進行するものであるということが、明確になってきたのです。そして、1996年(平成8年)、それまでの「成人病」という名前から「生活習慣病」へと、名前が変更されたのだそうです。

一時期は、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症など)、心疾患、脳卒中を指していたようですが、さまざまな疾患についてその発症要因が分かってくると、腎疾患や肝疾患、COPD、歯周病なども、生活習慣病に含まれるようになりました。

世界中で問題になっているのはホント?

少し前のことですが、2016年春、WHO(世界保健機関)は、「成人の糖尿病有病者数が2014年までに4億2,200万人に達し、1980年の1億800万人から4倍近くに増えた」と公表しました。全世界の成人人口と比較すると、およそ11人に1人が糖尿病という計算になります。また、このまま何の対策もしなければ、2025年までに世界の糖尿病人口は、7億人以上に増えるとも、予測されています。

これは、WHOが公表している「Global Report On Diabetes」という報告書からの抜粋ですが、この中には、世界の糖尿病者数4億2,200万人のうち、2分の1は上位の5ヵ国に集中していると書かれています。この5カ国とは、中国、インド、米国、ブラジル、インドネシアです。糖尿病患者数の増加に悩むのは、日本だけではないということです。

これは糖尿病についてのみのデータですが、昔の日本のように何らかの感染症で亡くなる方が減り、糖尿病やその合併症、心疾患、脳卒中、がんなどで亡くなる方が増えていることに、違いはありません。たとえば、「体重過多(BMI>25)」や「肥満(BMI>30)」の人口割合をみると、日本で体重過多の人はおよそ23%くらいですが、「体重過多」が60%を超えている国はたくさんあります。中には、「体重過多」と「肥満」を合わせると、90%を超えてしまうような国もあります。肥満=生活習慣病とはいい切れませんが、肥満になるような生活をしている人は、やがて何らかの疾患になっても不思議ではありません。

世界は今、こうした「生活習慣病のリスクがある人」が非常に増えている、ということなのです。

生活習慣病にならないために 誰でもできる?「食」を見直す生活

では、わたしたちが生活習慣病にならないために、何ができるのでしょうか。ここで冒頭の「定義」を思い出してください。主な原因は「食習慣、運動習慣、飲酒、休養、喫煙などの生活習慣」が原因でした。つまり、これを見直し、適切な生活習慣になれば良いのです。

まずは、「正しい知識」を持つこと

わたしたちは栄養士の卵ですから、「食」という視点から、適切な生活習慣を考えてみます。

「食」は、わたしたちの命を支える、大事な習慣です。毎日欠かさない3度の食事、時々楽しむ外食、小腹が空いた時のおやつなど、わたしたちの周りにはさまざまな「食」があふれています。

このような状況の中で、わたしたちは何に気をつければ良いのでしょうか。

まずは、「肥満」にならないよう、自分の適性体重を知ることです。その上で、「必要以上に太らない、健康を害さない食事」を考える必要があります。適性体重を知る指標のひとつとして、BMIという数値がよく用いられます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗

例えば、身長160cmで体重が48kgの場合、BMIは48÷(1.6×1.6)=18.75 となります。

年齢によって適正なBMIの範囲は、次のように変わります。

  • 18~49歳 :18.5~24.9
  • 50~69歳 :20.0~24.9
  • 70歳以上 :21.5~24.9

さて、皆さんのBMIは、この範囲内にありますでしょうか。先ほどの例ですと、49歳までなら適性体重の範囲に含まれますが、50歳を超えるとやや痩せ気味となります。

成人であれば身長が大きく変化することはありませんから、体重を維持すること、なおかつ健康を害さない食が必要です。体重を減らす、あるいは維持するためには、必要以上に食べなければ良いと考える人もいます。しかし、単に「食べない」だけでは、体重とは違う意味で、健康を害してしまう可能性もあります。これでは本末転倒ですよね。そうならないためにも、食に関する正しい情報が、必要なのです。
※BMIでは、脂肪と筋肉の区別をつけていないので、数値以上の人が皆「肥満」というわけではありません。あくまで参考として使用してください。

積み重ねが将来を決める?出来る事からコツコツと

生活習慣病は「●●をしなければ発症しない」というものではありません。たった1回の食事だけなら、大きな影響を及ぼすことは考えにくいですが、不適切な食習慣を積み重ねることで、やがて体のあちこちに何らかの影響が及んでくるようになるでしょう。それが、生活習慣病の怖いところでもあると思うのです。

今、目の前にあるおいしそうな食事。これがやがて体のどこにどのような影響を及ぼすのか?こんなことを考えていては、せっかくの食事も、おいしさが半減してしまう気がしませんか?

確かに、普段の「食習慣」は、生活習慣病を発症する過程での、大きな要因なのだと思います。しかし、毎回毎回悩みながら食事をするよりも、毎日少しずつ、できることからコツコツと、不適切な食習慣を適切な食習慣に変えていければ良いのだと思います。

例えば、外食でおいしいラーメンを食べたとき。スープには脂肪分や塩分がたくさん含まれています。これを完食するのではなく、「麺と具は食べるけど、スープは残す」というちょっとした変化も、毎回続ければ自分にとっての習慣となるでしょう。

また、「野菜をたくさん食べる」「食塩を摂りすぎない」なども、生活習慣病予防としてよく聞かれることです。では具体的にどれくらいが適切なのか?というのは、分かりにくいですよね。毎回、食事を作る時にカロリー計算をするとか、野菜の量を測るとか、普段の生活の中ではなかなか取り入れにくい習慣かもしれません。

しかし、例えば外食の時に選べるセットの内容をサラダにしたり、付け合せの野菜が多いメニューを選ぶ、ということからなら、始められるのではないでしょうか。あるいは、ソースをつけすぎない少し薄味を心がけるなど、日々の食習慣を少しずつ「健康的なもの」に変えていくことは、そう難しいものでは無いと思うのです。わたしたちが目指す「栄養士・管理栄養士」は、こうしたことを常に頭の中におき、食に関するプロとして、「食」や「栄養」を考えていくことが、仕事になるのです。

生活習慣病を予防するために 栄養士・管理栄養士と食習慣の関係

では、栄養士や管理栄養士は、生活習慣病を改善・予防するための食習慣に、どのようにかかわっていくことが望まれるのでしょうか。

「なってしまった人」への対応

分かりやすい例を挙げるなら、「病院などでの栄養指導」がこれにあたります。病院には、がんや心疾患、脳卒中や糖尿病など、さまざまな生活習慣病になっている患者さんがいます。そんな病院において栄養士や管理栄養士は、患者さんの給食の献立を考えたり、実際の調理や盛り付け、配膳などのフードサービスや適切な食事についての指導を行います。

また、社会福祉施設などにも、栄養士あるいは管理栄養士がいます。社会福祉施設とは、分かりやすくいえば高齢者施設や障がい者施設などのことをこう呼びますが、そこでの栄養管理、栄養指導、献立作成、調理やフードサービスなども、栄養士や管理栄養士の仕事です。

こうした病院や施設の中では、患者さん(あるいは施設なら利用者さん)の健康を維持し、なおかつ生活習慣病の進行を抑えるような献立を考えます。これが「治療食」の基本なのだと思います。さらに患者さんにも「なぜこの食事が必要なのか」を、お伝えしていく必要があります。疾患によっては、制限しなければならない栄養素がありますし、治療やお薬の内容によっても、控えた方が良い栄養素もあるためです。

また、同じ食材でも、患者さんによって好きな食べ方や、好きな調理方法があるかもしれません。生野菜は苦手だけど温野菜は好きとか、この食材は嫌いだから食べられないけど、ほかの食材で代用できないかとか。患者さんの好きな食材や食べ方なども、献立を考えるときのヒントになります。でもこれは、患者さん自身と話をしてみないと分かりませんよね。こうした情報収集も、管理栄養士の大切な仕事なのです。

「予防したい人」への対応

では次に、予防したい人について考えてみます。

人は誰でも、望んで病気になるわけではありませんので、対象となるのは「すべての人々」かもしれません。分かりやすい例を挙げるなら、「行政栄養士」と呼ばれる仕事が、これに近いと思われます。行政栄養士とは、自治体が管轄している保健センターや保健所などで、主に地域住民に向けた栄養指導や食育活動などを行う仕事です。

例えば、保健センターなどに栄養相談の窓口を設け、相談者の状況に応じて、適切なアドバイスを行います。具体的には、まだ生活習慣病にはなってはいないけれど、血圧や血糖、コレステロールや中性脂肪が高めの方に対し、普段の食生活で何に気をつければ良いのか、食材の持つ栄養素の違いや体への影響なども含めて説明し、献立の例などをアドバイスします。もちろん、相談を受ける中で、食に対する嗜好やアレルギーなどについてもヒアリングし、その内容に合った指導をする必要があります。

また、地域の保健師さんと協力して、地域住民の方に向けたセミナーなどを企画、運営することもありますし、地域の飲食店での「ヘルシーメニューの推進」などにも、関わることがあるようです。

本来は、子どもの頃からの対策が必要?

生活習慣は、成人になってからいきなり変えようとするのは、大変ですよね。子どもの頃から慣れ親しんだ食材や味、食べ方や食事の時間など、食に関する習慣はそうそう変えられるものではありません。

そもそも、成人病から名前が変わった理由の一つに、「子どもの中にも生活習慣病になる例が増えてきた」ということがあります。子どもの食習慣は、食事を作って一緒に食べる大人の影響を大きく受けているのです。

現在の日本では、お菓子や甘い飲料などもすぐに手に入るようになり、栄養を取りすぎる子ども、栄養のバランスが悪くなっている子どもが増えました。その結果、子どもの生活習慣病が増えてしまった、ということなのです。あるいは、子どもの頃は大丈夫でも、不適切な食習慣が身についてしまえば、やがて生活習慣病となる大きなリスクを抱えてしまうことになります。つまり、子どもの頃から「不適切な食習慣を身に着けない」というのも必要なのです。

そこで、ここ数年、全国的にも広がってきたのが「食育」という活動です。子どもの頃から食に興味を持ち、適切な食習慣を身に着けること、これが食育の目指すところなのです。

 

いかがでしょうか。

生活習慣病は、普段の食習慣と切っても切れない、深い関係があります。わたしたちが目指す栄養士・管理栄養士という職業は、栄養の面から生活習慣病予防を支える、世の中にとても必要とされる職業なのです。