電子カルテの基本的なことを理解したい!


電子カルテというITシステムは、誰でもが簡単に扱えるシステムではありません。
「カルテ」という名称が示す通り、医療機関の中で使うことを前提として開発されたITシステムです。
でも、近い将来、医療機関で働きたいと思っているなら、あなた自身が仕事で使うシステムになるかもしれません。

今回は、電子カルテとはどのようなものか、ごく基本的なことをお伝えします。

電子カルテってそもそも何?

電子カルテとは、一言でいえば「医療機関の中で使われるITシステムのひとつ」なのですが、実は非常に複雑な構成をしているのだそうです。
まずはその内容について見ていきます。

医療機関で使われるITシステム

「医療機関」といえば、何をイメージしますか?一番イメージしやすいのは、わたしたちがケガをしたり体調を崩した時にお世話になるところだと思いますが、これには大きく分けて「病院」「診療所(クリニック)」があります。このほかにも

  • ◆産院や助産所:出産をするところ
  • ◆療養所:長い期間をかけて療養するところ
  • ◆保険薬局または調剤薬局:医療保険が使える、薬剤師さんが処方箋に基づいてお薬を出してくれるところ

などが、医療機関に含まれます。

「電子カルテシステム」はこのような医療機関(主に病院と診療所)で使用されるのですが、このシステムを利用する人、つまりそこで働く人たちの仕事の内容によって、複数のシステムが統合されて運用されています。

例えば、医師が使う「診療録」、看護師さんが使う「看護記録」、検査結果などを管理する「検査情報システム」、画像検査などを管理する「画像検査システム」など、名称や求められる機能はさまざまです。さらには、これらを安全に運用するための「ネットワークシステム」や「セキュリティシステム」も統合されています。

登録されているデータ

では、この電子カルテシステムには、どのようなデータが登録されているのでしょうか。一言でいえば「患者さんの診療に対して発生するデータすべて」です。カルテは長い間「紙」で運用されてきました(今でも紙カルテはあります)が、そこには、次のような事が書かれています。

 

<患者さんの基本情報>

・患者さんのID、氏名、生年月日、住所、連絡先、緊急連絡先、家族歴、身長や体重、アレルギー、喫煙や飲酒の状況、既往歴(きおうれき:これまでに罹ったことのある病気やケガ)など

<診療に関する情報>

・患者さんの主訴(しゅそ:自覚症状や体調などの訴え)、各種検査結果、お薬の情報、診断名、治療方針、医師による診察の記録、医師からの指示 など

<看護や経過に関する情報>

・バイタルサイン(血圧、脈拍、体温など)、観察の結果、尿や便などの記録、食事内容と摂取量の記録、看護ケアの記録 など

<検査に関する情報>

・検査指示、検査結果、画像検査により得られた画像(一部)、その画像に対するレポート など

<処置や手術に関する情報>

・処置や手術の指示、処置や手術の経過と結果、病理診断を行った場合はその方法と診断結果 など

<お薬に関する情報>

・投薬の指示、投薬日時と薬剤、投薬の結果 など

 

電子カルテには、これらのデータが、発生した日付(日時)とともに書きこまれている、ということになります。

 

参照されるデータ

では、電子カルテで参照されるデータとは何でしょうか。

少なくとも、登録したデータは、それぞれで参照することができます。
もちろん、画像検査もデジタル化されていれば、フィルムではなく「画像データ」として、専用のシステムに登録され、電子カルテから参照することができるようになります。

ところが、電子カルテと紙カルテの違いは、これだけではありません。

電子カルテとは前述のような、業務ごとのシステムを統合したものです。
それぞれのシステム、例えば医師が登録した「診療録」、看護師さんが登録した「看護記録」など、複数の医療者が登録したデータが、リアルタイムで共有されます。
また、時系列に並び変えながらグラフ化したり、前回の検査結果との比較が一つの画面上で出来るような仕組みも、組み込まれているものもあります。

 

誰が何のために使うもの?

これを一言でいうならば、「医療者が、患者さんへの医療を提供するために使うもの」です。

例えば病院の中のことを、診療の流れに沿って考えてみます。

1.何かしらの体調不良があって、病院に来た患者さんは、まず受付で名前や住所などの「基本情報」を申告し、受付がそれを電子カルテに登録します。

2.次に外来の診察室の前で、看護師さんから質問を受けます(問診といいます)。
その結果を看護師さんが登録すると、診察室に呼ばれた時には医師が確認できるようになっています。
※病院・診療所によっては、受付の際などに医療事務職員が行うこともあります。

3.診察の結果、いくつかの検査を受けることになり、患者さんは順番に複数の検査室を回りますが、それぞれの検査室では医師からの「何をどのように検査してほしいか」という検査指示を、患者さんが来た時点ですでに確認できていますので、検査もスムーズに進みます。

4.検査が終わると患者さんは再び外来診察室に戻りますが、ある程度の時間が経てば検査結果が登録され、患者さんが再び診察室に入った時には医師が検査結果を確認しています。

5.この患者さんは今すぐ入院しましょう、となった場合、患者さんが病棟に着く頃にはすでに患者さんの基本情報や、診察の内容、検査結果などが、病棟でも確認できるようになっています。

6.病棟の看護師さんは患者さんの状況を確認しながら、受け入れるための準備ができますので、患者さんが病棟に来たらすぐに必要な看護ケアを提供することができます。

これがもし紙カルテであれば、誰かが記録をしている時は他の人が書きこむことはできません。
誰かが書いたものを確認することも難しいのです。

紙のカルテはコピーができませんし、1人の患者さんには1つのカルテしかありません(外来カルテと入院カルテは別になりますが)。
つまり「カルテが空くのを待つ」というタイムラグが生じてしまうのです。

その点、電子カルテが運用されていれば、カルテが空くのを待つ時間を減らすことができ、医療機関、患者さんともに大きなメリットになります。

 

電子カルテってどれくらい使われているの?

非常に便利そうに見える電子カルテですが、実際にはどれくらい使われているのでしょうか。

いつ頃から使われているのか

実は、電子カルテが世に出る前、医療機関の中で一部分だけIT化されたものがありました。
1970年代に登場した「レセプトコンピュータシステム」です。
レセプトとは医療報酬(医療機関にとっての収入)の明細書のことです。
分かりやすくいえば「患者さんが受けた医療行為や処方された薬剤のうち、保険診療になるものについて、医療機関が保険者(市町村や健康保険組合等)に請求するもの」となります。

かつてはこれらも、紙に記録され、医療機関の会計窓口において手計算されていました。
患者さんの費用負担割合(1割や3割など)によって、その日のお会計を計算するのですが、もちろんこれも手計算だったのです。

1日に100人の患者さんが訪れるクリニック、しかも患者さんによって提供された医療行為や処方されたお薬も違う、という状況を想像してみてください。
患者さんを待たせることなく、間違いの無いように計算するのって、ものすごく大変だと思いませんか?
こうした業務の効率化と、人的な計算ミスを無くす目的で導入されたのが、レセプトコンピュータシステムでした。

その後、検査画像をデジタル化する技術が発達し、PACS(医用画像管理システム)と呼ばれるシステムが登場します。PACSの登場により、「フィルムが現像され、運ばれてくるまで確認ができない」という課題が解決され、患者さんや医師などの待ち時間の短縮や、フィルム保管場所の縮小などが可能となりました。

さらに1990年代になると、やっと「電子カルテ」の前身となるシステムが登場します。
当時はまだ「診療支援ソフト」などの名称で呼ばれていたようです。

そして1999年に、厚生労働省が「カルテを電子媒体へ記録すること」を認めたことで、電子カルテが正式に認められたといわれています。

ただし、紙カルテには「唯一無二の存在」という、診療記録の大前提がありますので、電子化するにあたっては、「真正性」、「見読性」、「保存性」という、電子カルテの三原則があります。
この条件を満たす場合のみ、カルテとして利用しても良い、というガイドラインも定められています。

 

今現在、どれくらい使われているのか

厚生労働省は2001年に、「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」を策定しました。
これは、保健医療分野でも情報化を進めようという国の方針に則ったものですが、この中では「2006年度までに全国の400床以上の病院および全診療所の6割以上に電子カルテシステムの普及を図ること」という目標が掲げられていました。
しかし2017年現在でも、この目標はまだ達成されていません。

試しに、厚生労働省が行っている「医療施設調査(2016年)」の中から、全国の病院のうち、病院すべてまたは病院の一部で電子カルテを導入している病院の割合を調べてみました。

すると、病院の規模によってその導入率はだいぶ違うことが分かります。

 

「400床以上の病院」に限ってみれば、6割という目標は達成できているのかもしれません。
しかし病院すべてでは、電子カルテを導入しているのは、まだ3割程度ということになります。

一方、電子カルテよりも先に世に出てきた「レセプトコンピュータシステム」は、2013年現在で病院およびクリニックのうち99.6%に導入されているといわれていますので、普及率としては電子化カルテよりも高いといえます。

 

電子カルテで何が変わったのか

まず、電子カルテには、紙カルテには無いメリットがあります。
それは「誰でも判読できる状態で表示されること」です。

紙カルテの場合、手書きでの記録が多くなります。
しかし、手書きであるゆえに、どうしても「読みにくさ(判読のしにくさ)」はあります。
誤字脱字もあるかもしれません。

これがもし「患者さんへの指示」だったら、その指示を受ける立場の人はどうでしょうか。
医師が書いたものが読めない場合、指示の内容を医師にいちいち確認しなくてはなりません。

万が一、間違ったケアや投薬をすることになれば、大きな問題です。
患者さんを危険にさらすことになります。
このような「人的なミス」を防ぐという役割も、電子カルテにはあるのです。

さらに電子カルテには、複数の医療機関内でデータを共有する、という役割も期待されています。
患者さんは病状やその時の状況によって、かかりつけのクリニックと、大きな病院とを使い分けています。

この時にかかりつけのクリニックと大きな病院との間で、電子カルテが共有できるような仕組みがあれば、それぞれの医療機関でどのような診療を行ったのかが分かります。

もちろん、医療者なら誰でも見れるということにはなりませんが、例えば「大きな病院での手術の内容を、かかりつけのAクリニックの医師が見れる」というような設定がされれば、必要な人だけが「見れる」システムにもなり、医療の質が向上するとされています。

 

電子カルテを扱えるようになるには?

医療機関の中で発生する、とても大事なデータを管理する電子カルテ。
ではこのシステムを扱えるようになるには、どうすれば良いでしょうか。

 

セキュリティについて深く学ぶ必要がある

電子カルテに登録され、参照・利用されるデータは、非常に秘匿性(ひとくせい:隠されており、他人からは見えないようになっていること)の高いものです。
前述のように「誰でも見て良いもの」ではありません。
その一方で、「見ても良い人はいつでも正しいデータが見られる」という機能も必要です。

そこで必要なのが、セキュリティに関する知識です。

いつ、誰が、どのデータにアクセスできるのか、「誰」をどうやって見極めるのか、人によって「どのデータ」なら見ても(登録しても)良いと判断するのか。
こうしたことの概念を学んでおく必要があります。

 

基本的な仕組みと使い方を学ぶ必要がある

電子カルテは通常、さまざまな部門ごとのシステムを統合した形になっています。
しかし、どのような部門システムでも、一つひとつのデータを識別するために必要なのが患者さんのIDです。
古いデータも新しいデータも、すべて患者さんのIDを使って呼び出すことになります。

また、登録する側も「誰が」の部分はIDで管理され、登録した日時も併せて管理されます。
このようなデータの構造を知っておく必要があります。

さらに、紙のカルテは通常「書き換え」はしてはいけないことになっています。
これは電子カルテも同じで、入力時の間違いを訂正することは出来ますが、一度登録したデータは書き換えができません。
このようなシステムの特性も理解しておく必要があります。

 

求められる人材になるために

電子カルテは現在、複数のIT企業から提供されていますし、医療機関によってはオリジナルのシステムが導入されていることもあります。
どのようなシステムでも、「具体的な使い方」についてはは、医療機関に就職した後で学ぶことになります。
しかしそれ以前に、前述のような「セキュリティ」に関すること、基本的な仕組みや使い方は、予め学んでおく必要があります。

また、電子カルテは基本的に、一般にも販売されているいわゆる「パソコン」から利用するものですので、ある程度のパソコンスキルを持ち合わせていることも必要です。

さらには、「電子カルテには何が書かれているか」ということも理解できなくてはなりませんので、医療に関する知識も学んでおくと良いでしょう。

医療機関へは、国家資格のある医療者でなくても就職はできます。
しかし、前述のようなスキルを持ち合わせているかどうか、例えば専門学校などで何を学んできたかによって、医療機関側からのあなたへの信頼度は大きく変わります。

 

いかがでしょうか。

IT技術の発達に伴い、紙から電子で管理されるようになったカルテ。
導入率から考えると、国の方針には達していませんが、今後はさらに導入が進むと考えられています。

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いずれのコースでも、電子カルテを使えるようになるための、基本的なコンピュータスキルを習得することができます。
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