【進路を迷っている方にも】栄養学とは、何を学ぶ学問なのか


栄養学を一言であらわすなら、食品の持つ栄養素や、その働きについて研究する学問です。
私たちが成長し、健康に生活していくために、どのような栄養素が必要で、その栄養素はどのような食品から摂取したら良いのか。
こうしたことについて学び、さらに未知のことについて研究していく、これが「栄養学」の基本となっています。

 

今回は私たちの生命に大きな関わりのある栄養学について、お伝えします。

栄養学は、命について学ぶ学問?

ミクロの世界について学ぶ

栄養士を目指すうえで、栄養学は他の科目を学ぶための基礎となる学問です。
実際のカリキュラムでは、食品に含まれる栄養素について主に学びます。

 

みなさんは「五大栄養素」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
私たちが健康に生活するには、食事からエネルギーを摂取すると同時に、からだの調子を整える栄養素が必要です。
食品の栄養素は、その働きや性質から、炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル(無機質)の大きく5つに分類されます。
食品は目に見えるものですが、食品に含まれる栄養素とは目に見えないほど小さな物質です。
栄養学では、この小さな物質の、それぞれの性質と、消化や代謝などの働きについて、詳しく勉強します。

 

 例として、炭水化物を見てみましょう。
炭水化物は、大きく糖質食物繊維で成り立っています。糖質は私たちが生きていく上での重要なエネルギー源で、穀類、いも類、果実類、砂糖に多く含まれています。

 

さて、炭水化物を構成する「糖」ですが、「単糖」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
単糖とは、それ以上分解することができない糖のことで、炭水化物は、この単糖が繋がってできています。構成する単糖の数によって、単糖類、小糖類(二糖類、オリゴ糖)、多糖類に分類されます。

●単糖類:代表的な単糖として6個の炭素と水からなる六単糖があります。
 グルコース・・・穀類や砂糖に含まれる
 フルクトース・・・果物やはちみつに含まれる
 ガラクトース・・・牛乳や乳製品に含まれる

●二糖類:単糖が2個結合したもの
 スクロース・・・グルコースとフルクトースが結合、砂糖とも呼ばれる
 マルトース・・・グルコースが2個結合、穀類に含まれる
 ラクトース・・・グルコースとガラクトースが結合、牛乳に含まれる

●オリゴ糖:単糖が3~10個程度結合したもの

●多糖類:単糖が多数結合したもの
 でんぷん・・・穀類(米、パン、麺)いも類(でんぷんには、単糖であるグルコースが鎖のように結合したアミロースと、さらに枝分かれしてグルコースが結合したアミロペクチンがある)
 グリコーゲン・・・魚や肉などに含まれる、グルコースがいくつも結合したもので、動物の肝臓や筋肉にエネルギー源として貯蔵されている

一言で「糖」といっても、これだけ多くの種類があり、実際に多く含まれる食品も違います。
栄養学では、このような「目には見えないけど、それぞれの特つ栄養素」について、深く学んでいくことになります。

働きと影響を学ぶ

例えば先ほどの「糖」にも、人の体に対する働きや影響があります。
まず、糖の働きです。糖は、体を動かすエネルギーになります。食事をすると、ぞれぞれの食品が分解され、やがて「これ以上は分解できない」という単位まで小さくなっていきます(もちろん、目には見えません)。その代表的な成分が「糖(単糖)」なのですが、食事から数時間たつと、体の中に蓄積される糖は一時的に非常に多くなります。

人の体の中には、「今すぐに使わない糖をためておく」という機能があります。この機能のおかげで、次の食事までの間、わたしたちは運動したり勉強したり、家事をするなどの活動ができるわけです。 そして、人の活動に合わせて、だんだんとためておいた糖を使い、エネルギーに変えていきます。やがてためておいた糖がなくなってくるころに次の食事をとり、わたしたちは再び活動ができるようになります。  

 

では、必要な量を大きく超えて、糖を摂取するとどのような影響があるのでしょうか。
余分な糖は「中性脂肪」として貯蓄されることになります。そのため過剰な糖の摂取が続くと、肥満になる恐れがあります。肥満は糖尿病との関連が高いとも言われているため、十分に注意する必要があります。 糖が過剰になっても、体にとって悪い影響が無いなら、問題は無いでしょう。

でも実際にはそんなことはなく、糖が過剰な状態が長く続くと、糖尿病を発症し、体のさまざまなところに悪い影響を及ぼすようになります。
このように、栄養素の働きや、それが体に及ばす影響についても、栄養学の中で学んでいくことになります。

 

 

生命との関わりを学ぶ

わたしたちの体は、さまざまな栄養素がお互いに影響を与えながら、健康な体を維持しようとしています。体にとって十分、かつ、バランスの良い栄養素を食事からとることが、健康な体、強い体を作るためには必要です。

 

例えば、今現在、何かしらの病気があり、それを改善してより健康な状態に近づけるためには、どのような栄養素が必要なのでしょうか。
あるいは今の状態を維持し、病気を悪化させない、ほかの病気にならないためには、どのような栄養素をどのような方法で体に取り込むことが必要なのでしょうか。

 

このように、栄養素がわたしたちの体に与える影響だけではなく、生命を維持すること、そのために必要な栄養素は何か、どうやって摂るのが良いのか、こうしたことも深く学んでいくのが、栄養学なのです。

 

>食品学とは、どのような学問なのか?

>公衆栄養学を通じて学ぶこととは

>臨床栄養学で何を学ぶのか?

 

栄養学はどのように変化してきたのか

近年ではさまざまな情報技術の発展や、多くの先人たちの研究などにより、それまでは分からなかったことがいろいろと解明されてきています。ではここで、日本における「栄養学」が、どのように変化してきたのか、歴史的な背景を見て行きましょう。  

 

学問の創設と資格

日本における栄養学を学問として確立したのは、佐伯矩(さいき ただす)という人物で、「栄養学の創始者」と言われています。
1924年(大正13年)、当時の国立栄養研究所長だった佐伯矩によって、佐伯栄養学校(現在の佐伯栄養専門学校)が創設されます。

 

そこで、医師10名、高等師範1名に対して栄養に関する講義が行われ、栄養学という学問が始まりました。
当時、農学や医学領域における栄養学・食糧学の研究は進んでいましたが、その栄養学を、国民の栄養や食糧問題に応用・実践する先駆者となったのが佐伯矩なのです。

佐伯矩は京都帝国大学(現:京都大学)で医科学を学んでいたころ、すでに栄養に関する研究に取り組んでおり、大根に含まれる消化酵素を発見したのも、その研究の一つなのだそうです。
また、当時の教科書などでは「営養」と表記されていたのですが、健康を増進する、という意味から「栄える」という字が採用され、栄養という言葉が一般的に広まることになりました。
完全食や、偏食という言葉も佐伯矩によって作り出されたそうです。

 

「栄養士」という呼称も佐伯によってつけられたもので、佐伯栄養学校で1年間学んだ多くの学生を、「栄養士」として世に送り出しています。   その後、1934年(昭和9年)に、日本医学会の分科会として栄養士学会が正式に独立。
1947(昭和22年)に制定された栄養士法より、栄養士という称号が公的なものになりました。
さらに1962年には、管理栄養士制度がつくられました。

 

佐伯栄養学校の卒業生たちが、栄養専門家として地位を確立し、栄養士法や栄養改善法(現在の健康増進法)制定など、栄養改善活動の環境整備に尽力されたことで、現在に至っているのです。  

 

日本における主食論争

日本人の主食である米。真っ白に精米したお米は、見た目がキレイで美味しそうですよね、でも、精米することによって、糠や胚芽に含まれる豊富な栄養素まで無くしてしまうことを知っていますか?

 

古くから日本人を支えてきたお米の食べ方には、色々な意見があり、主食論争が繰り広げられていたようです。

明治時代から勧められていた玄米ですが、食物繊維が多いため、せっかくの栄養が未消化で排泄され、吸収が悪いと考えられるようになります。 しかし一方の精米した米は栄養価が低く、当時ビタミンB1不足による脚気が多発したこともあり、低栄養が心配され、玄米と精米の中間を勧める考えが広まります。 それが、胚芽米と七分づき米です。

◆胚芽米:特殊な精米法で胚芽部分を残し、ぬか層をけずる
◆七分づき米:ぬか層と胚芽も含めて全体的に削り、見た目は白米に近く、胚芽が一部残っている状態

1921年、医師の二木謙三によって玄米をすすめる本が発行される中、佐伯矩は七分づき米の普及を目指し「標準米」として提唱しました。
一方、香川陵(女子栄養大学創設者)や、陸軍の糧友会は、脚気予防のために胚芽米を採用し、東京市(現在の東京都)も胚芽米の普及をすすめたことで、栄養研究所や栄養士との間に対立が起こります。

その後1939年、農務省より胚芽を含んだ七分づき米が奨励されるのですが、その後も、玄米復帰に注目が集まるなど、と日本における「主食論争」がしばらく続いたのです。    

日本における主食論争

戦後、アメリカからの支援物資が発端となり、日本の食生活の欧米化が進みました。学校給食ではパンや脱脂粉乳が中心となり、家庭での食生活でも、小麦を使った食品や動物性たんぱく質を多く摂取する欧米風の食事スタイルが急速に普及していきます。
1950年から1975年の間に、牛乳15倍、肉、鶏肉や卵は7.5倍、脂肪は6倍、一方の米の消費量は0.7倍に減少し、日本の食生活は劇的に変化したことが分かるでしょう。

 

日本の伝統的な食事はタンパク質・脂質・炭水化物のカロリー比率が理想的だと言われています。
食の欧米化で、米や野菜の摂取量の減少や、動物性脂肪や砂糖・塩分の摂りすぎが危ぶまれるようになり、1983年農林水産省によって、日本型食生活を取り戻そう、と提案がなされました。
さらに1993年には厚生省によって、食生活の教育が重要であるとして、食育という考えが広まることになります。
食の欧米化と生活習慣病には関係が大きいと考えられます。

生活習慣病を予防するには、小さい頃からの正しい食習慣と、食に関する知識を身につけることが大事なのです。  

 

再評価される日本型食生活

皆さんもご存知の通り、和食とはごはんを中心とした一汁三菜です。
ごはんを主食にしながら肉類、魚、野菜などの主菜・副菜と、さらに牛乳などの乳製品が適度に加わることで、栄養バランスのとれた食事となっており、日本が世界有数の健康長寿国であるのは、このような優れた食生活にあると国際的にも評価を受けているほどです。

 

栄養バランスを詳しく見てみると、たんぱく質、脂肪、炭水化物の組み合わせにおいて、1980年代の日本の食生活が理想的な比率となっており、これが「日本型食生活」と呼ばれているものです。
この日本型食生活は、肥満や心臓疾患、糖尿病などの生活習慣病の予防にも大きく関わっていると言われています。

現代社会において食生活の欧米化が問題視される中、私たち日本人は、日本の伝統食である「和食」を再評価し、日本型食生活を取り戻すことで健康的な生活を続けることができるといえるでしょう。  

 

栄養学のプロ、栄養士・管理栄養士

わたしたちは、栄養学を深く学び、栄養分野のプロとなることをめざしています。では「栄養分野のプロ」とは、どのような仕事をするのでしょうか。

 

専門的に学ぶ必要性

例えば、毎日の食事。この1週間で、1日3食、計21食、すべてバランスの良い食事ができたでしょうか。
今現在、特に大きな病気などをしていない人は、21食中の何食かは、栄養バランスを気にすることなく、好きなものだけ食べていても、特に大きな問題は無いと思うかもしれません。
肉が好きだから毎日肉はたくさん食べるけど、野菜が嫌いだからほとんど食べない、こういう方もいるでしょう。
そういう食生活も「たまに」であれば、それ以外の食事でフォローできるかもしれません。

 

でも、今現在どこかに体調不良を抱えている人は違います。
自分のキャパシティを超えてしまうほどたくさん食べた日が続いた、米ばかり食べる日が続いた、野菜はあまり食べないなど、栄養バランスの悪い食事を続けると、どのような影響があるのでしょうか。
まず、それらの食品から摂取できる栄養素に過剰と不足が生じます。

 

しかし、人の体を健康に維持していくためには、必要な栄養素とそれぞれの必要な摂取量があります
このバランスが崩れてしまうと、元々の体調不良の原因がさらに悪く影響することがありますし、逆にほかの部分の調子を崩してしまうこともあります。
どこかで栄養バランスを整えるような努力をしないと、生命の危機にもつながる状態になってしまうこともあります。

わたしたちは、こうした「人の生命に直接的に影響すること」を、専門的に学んでいます。
そうすることで、人の体のことを深く知り、目には見えない「栄養素」の影響を見抜く、専門家としての「目」を養っています。

 

この学問を活かす働き方

栄養士も管理栄養士も、最終的には「人の健康を栄養面から支える」ことが、求められるスキルといえます。
栄養学について深く学ぶことで、人の体の中で栄養素がどのような影響を及ぼしているのか、その影響を小さくして、人がより健康に生活していくためにどうすればよいのか、それをアドバイスするのが、私たちのめざす働き方です。

子どもが対象なら保育園栄養士として「食育」という分野で働くことができます。
病気の人が対象なら、病院での「栄養管理」が主な仕事です。
このほかにも、新しい食品を開発するという分野でも、人の健康を損なわない、安全でおいしい食品を開発すべく、知識や技術を発揮しています。

 

いかがでしょうか。 栄養学は、栄養素という目には見えない、でもわたしたちの体に大きな影響を与える、大事なものについて学ぶ学問です。
栄養学を学ぶことが、将来、どれだけの人の健康を守ることができるのか。

興味をもった方は、ぜひパンフレットを見てみてくださいね。

 

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