安定した仕事って、どんな仕事なの?


将来の自分自身を想像するとき、いちばんに考えるのは「仕事」ではないでしょうか。
将来のあなたは、どのような会社や組織で、どのような仕事を任されていますか?
そこであなたはどのように仕事をしていますか?そんなことを考える世代の多くは、どうも “安定” を目指しているようです。

 

安定した仕事に就きたい!

そもそも、「安定した仕事」とは、どのようなお仕事なのでしょうか。

 

どのような姿をイメージをしている?

将来の安定を求めているという世代が思い描く将来像とはどのようなものなのでしょう。
ソニー生命調べによる『中高生対象が思い描く将来についての意識調査2017』の結果によると、高校生の「将来の夢」についての問いに対する回答は「安定した毎日を送る」が1位と、最も多くなっています。
これに、「好きなことを仕事にする」「あたたかい家庭を築く」「趣味を充実させて生きる」と続いています。
これは下の世代である中学生でも、同じ回答が上位を占める結果となっています。

 

将来をまだ半ば夢として捉えるような中学生世代であっても、ある程度自分自身の持つものや現実が見てきている高校生世代であっても、「安定」をまず求めている、ということです。
「お金持ちになる」という選択肢も用意されていましたが、そう回答したのは6位でした。
思い描く姿としては、大きな成功をおさめて収入が増えることよりも、興味のあること・好きなことを仕事にして、自分の生活にあった働き方で安定した日々を送っている自分、といった感じなのでしょうか。

 

高校生対象の「なりたい職業」についての問いに対しても回答も興味深いものです。「ITエンジニア・プログラマー」や「絵を描く職業(漫画家・イラストレーター・アニメーター)」など趣味や好きなことを反映した回答もありますが、男子高校生の4位、女子高校生にいたっては1位となった職業があります。

 

それは「公務員」です。
公務員といってもたくさんの種類があり、多くの職種がありますから、もっと具体的に回答者がどの公務員のことを言っているのかはわかりません。
しかし、よほどのことがない限り職を失うこともないでしょうし、民間企業に就職してその企業が無くなってしまう心配や、自営業で失敗してしまう可能性を考えれば、確かに “安定” しているのは間違いありませんよね。  

 

どんな条件がある?

安定した仕事について考えたとき、そもそも何をもって “安定” としているのでしょうか。

先の公務員の例でも分かるように、第一には、その企業なり組織なりがつぶれてしまう(倒産)ことがないということでしょう。

その会社や組織、またはその会社や組織が扱う事業が、継続して需要があるということが大切ですよね。 次に考えられるのは、処遇や待遇が良いことでしょうか。
これは正規・非正規などの雇用形態や給与・賞与、福利厚生なども入ってくるでしょう。
決して飛び抜けた高給を希望しているわけではなく、働いたことに対する適切な報酬や立場を得たいというのは当たり前ですよね。

 

あとは、ずっと働けるということでしょうか。
離職率が高い職場ではやはり何かそうなる理由があるのだと要らぬ憶測をしてしまいます。

しかし、働き続けられる環境づくりや、働きやすさを考えている企業や組織での仕事は、働く側としては安心感が高く仕事に対するモチベーションが高くなり、業務のパフォーマンスも上がりそうです。
労使ともに良い相乗効果を生みそうですね。

 

最後は、世の中の経済的な動きに左右されにくい業種というもの挙げられます。いくら企業や組織が努力を重ね懸命に働いたとしても、景気に影響を受けやすい業種では、よくない影響をそのままかぶってしまう危険性があります。
実際に不景気の時期には、多くの企業が巻き込まれ業績を落としたことで、リストラをせざるを得ない状況になってしまったこともありました。

 

安定した仕事にはどんな種類がある?

では安定した仕事について具体的にみていきましょう。  

 

業界をチェック!

先のとおり、人は次の5つのことを “安定” と考えている、と思われます。

●倒産しないこと
●需要が続くこと
●福利厚生の充実
●働き続けられること
●景気の影響を受けにくいこと

これらを満たすのが安定した仕事ならば、実際にはどのような仕事や職場が「安定している」のかを、考えていきましょう。  

 

公務員
5つの条件を満たす仕事としていちばんに考えつくのは、「公務員」でしょう。この業種の安定性は中学生や高校生であっても注目していることは最初にお伝えしたとおりです。公務員が安定しているのは、なんと言っても、倒産の可能性や解雇の心配がないという点でしょう。
国や地方自治体が雇い主ですから、倒産などあっては大変ですし、よほどのことがない限り解雇されることもありません。

 

給与待遇も決して悪くなく、平成28年の国家公務員(一般政職)の平均給与額は41万984円、年収換算で約670万円、地方公務員の平均給与額は36万5,549円、年収換算で約590万円です。
これは公務員の平均年齢である43.6歳での金額になっています。
特に国家公務員の給与額は、同年齢のサラリーマンの平均給与額と比べて高額になっています。 病欠や産育休時などの休暇制度が充実しているため、働きやすい環境が整っていることも間違いありません。
しっかり働いたのちの退職金制度も整っていますから、老後についても経済的な心配が少なくなるかもしれませんね。  

 

インフラ関連業界
電気、水道、ガス、石油など「インフラストラクチャー」といって、生活基盤となるライフラインを整備する業界です。
橋や道路、大型の公共施設などの新規建造やその補修作り替えというメンテナンス作業も含まれていますから、国がある限り続いていく仕事です。

 

但し、インフラ業界とひとことで言っても、下請け企業かから大企業、公務員まで、その工事やメンテナンスに携わる組織や企業はさまざまです。
場合によっては安定しているとは感じられない働き方になるかもしれません。  

 

医療業界
医師や看護師に代表される医療業界も安定した業界のひとつです。
この世の中からケガや病気はなくなることはありません。
人の命や健康といったことに関わるのですから、医療業界現場での人手の需要がなくなることは考えられません。当然その現場には患者さんや利用者さんに直接的に関わる人たちは欠かせません。

この業界で働く人々は、国家資格が必要な職種が多く、資格取得後、本人の意思と知識やスキルがあれば、ライフステージや年齢を理由に仕事ができなくなることはまず考えられませんし、資格を裏づけとして、いつでもその時の自分自身の「いま」に合わせた転職をすることができるもの魅力的ですよね。

 

また医師や看護師の給与水準は高く、安定した生活を送ることができるでしょう。
さらに近年では、介護関連施設の増加によって、病院や診療所とは別の類型の施設での仕事先も可能になってきています。 いずれにしてもはたらく先が無いということは考えられなさそうです。  

 

人とともにある職種

3つの業界を挙げてみましたが、この3つには共通することがあります。それは、キーワードが「人」という点です。 公務員は市民・国民のためにはたらく人たち、インフラ業界は人のライフラインのための仕事、医療業界は言うまでもなく人を相手にした仕事です。つまり安定した仕事というのは、人とともにある業界や業種、職場ともいえるのではないでしょうか。そこに人がある限り、無くならない仕事や必要とされる仕事こそ安定しているということになります。 「人」をキーワードにして、先の3つ業界の中で注目したいのは医療業界です。 医療業界での仕事はとにかく専門職が多いのが特徴です。繰り返しになりますが、専門的な勉強を経て国家資格を必要とされる職種が多いのです。医師や看護師、臨床検査技師、薬剤師、診療放射線技師、助産師など、いろいろな専門職がチームを作りひとつのテーマに取り組む「チーム医療」なども近年の医療業界で大きく話題になっています。

ところで、こうした専門職が多く働く医療業界で、国家資格がなくても安定した仕事を続けられる職種があります。
専門職の人たちはいわゆる医療職や医療者と呼ばれる、直接的に医療と関わる・医療をおこなう職種のことをいいます。ここで紹介したいのは、医療職や医療の現場を利用する患者さんや利用者さん、ひいては医療の現場である医療機関や介護関連施設や事業所そのものを、手助けしたり支えたりするスタッフのことです。分かりやすくいえば、「医療事務」や「介護事務」という職業です。  

 

どうしたら安定した仕事に就けるの?

国家資格が要らない仕事なら、もしかして簡単になれるのかな?と思われるかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか。

医療系業界の職種

医療事務や介護事務がどんな役割を担っているのを知れば、具体的な仕事のイメージがしやすいでしょうか。さきほどは大まかに「医療事務」「介護事務」と紹介しましたが、本当に大まかにしか言いようがないのです。ひとことでは説明できないほど、その仕事の範囲は広く、任される業務も多岐にわたります。
医療機関や施設にもよりますが、特に規模が大きな場合は、ひとつの業務に専従する形が多く、小さめの規模の場合はいくつもの業務を兼任したり、何人かで担当制をとったりする場合などもあります。 医療機関の規模については、その機能や設備でいくつかの種類に分けられています。
医療機関を何の気なしに “病院” と呼んでしまいがちですが、正式には入院設備としてのベッド数が20台以上の医療機関を「病院」といいます。それ未満の施設は “診療所” です。
診療所は入院設備なしの “無床診療所” と 1~19床のベッドを持つ “有床診療所” に区分されています。 また、機能としての分類では、200床未満の中小規模病院や診療所は、かかりつけ医の役割を担う医療機関とされています。尚、ちなみに大病院とされる規模の基準では400床以上とされていますが、日本にはこの大病院は病院数全体の約1割といわれています。
こうした規模の違いで、そこで働く人たちの仕事の内容が変わってくるということになります。  
さて、「医療事務」の役割としては大きく3つのカテゴリーに分けられ、そのカテゴリー内にはいくつかの職種があります。

 

事務系の仕事

 

  • 医療事務

保険請求事務(医療費の計算と領収事務、レセプトの作成など)を中心に担当する。物品の管理や、受付、医療スタッフのサポートなどを担当することもある。介護関連施設や事業所においては、介護保険事務を担う。  

 

秘書系の仕事

 

  • 医療秘書

医局秘書や院長秘書として、診察業務のフォローやスケジュール管理、来客対応などを担当する。文献の整理や資料収集・整理などを任されることもある。

  • 受付

患者さんの呼び出しやカルテの取り扱い、診察券の発行などを担当する。診療所では会計を担当することもある。

  • クラーク

患者さんと医療スタッフとの橋渡しの役割を担う病棟クラークと、外来患者さんと医療スタッフの間で事務業務を担う外来クラークとがある。いずれも医師や看護師のサポート役としての役割がある。

  • 医師事務作業補助者

診察室に常駐し診療内容を記録するカルテを医師に代わり入力したり、これまで医師がおこなってきていた事務作業を代行したりする。医師の負担減を安定した医療の提供に繋げる近年注目の職種。

 

情報系の仕事

 

  • 診療情報管理士

カルテなどの診療情報を適正に管理し、適切に疾病分類する。蓄積された情報は、医療機関の経営や研究などに活用するため、統計データの作成分析もおこなう。

  • 医療情報技師

医療機関での情報システムの管理運営をおこなう。IT利用やシステムの導入が前提になっている現代の医療機関では欠かせない業務。医療機関独自のシステムの開発までも担うこともある。  

 

医療系業界の職種に就くにはどうしたいい?

幅広い仕事が用意されている・任されるということは、それだけ幅広い知識やスキルが必要とされるということです。
確かに国家資格は必要ありませんが、その業務は、国家資格を持つ専門家のそばでその仕事を支えたり、医療機関そのものを支えたりする仕事なのです。

医療機関の中ではたらく以上、どんな職種であったとしても、医療や医学の知識やそれに関連する法令についての認識も持っていなくてはなりません。

 

また、医療機関の収入の大部分は、診療の対価として請求する “レセプト(=診療報酬明細書)” という書類を適切に処理することで得ることができます。こちらについても正しい知識とスキルを必要とされる責任ある業務になります。
こうした知識やスキルを身につけて業務に臨むことができれば、自信を持って仕事に取り組むことができるでしょう。医療機関側でも、安心して仕事を任せることができるのではないでしょうか。

 

また特に医療系の業界では、患者さんや利用者さんの気持ちに寄り添うこころや、いま自分がサポートすべき相手にこころを配ることが大切な仕事です。

感じのよい印象を持ってもらえる立ち居振る舞いについても身につけておくとよいでしょう。
そうしたものをいかに養っていけるかも重要になってくるのです。      

 

参考
ソニー生命株式会社 ニュースリリース 中高生が思い描く将来についての意識調査2017 https://www.sonylife.co.jp/company/news/29/nr_170425.html  
看護大学・専門学校受験ナビ 高校生のなりたい職業ベスト10
http://www.kanngogakkou.com/naritai-shokugyou.html  
マイナビ学生の窓口フレッシャーズ 公務員の給料&年収は平均でどれくらい?地方公務員・国家公務員の年収の差は?
https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/45684?page=2   yomiDr.