ドクターズクラークの仕事がしたい!資格は必要?


わたしが京都栄養医療専門学校に入学するきかっけになったのは、以前、病院を受診したときに見た、診察室で医師の診察内容をパソコン入力していた人を見たことです。

医師の話や診察内容を黙々と入力する姿に “かっこいい!” と思ったのです。

 

今回は、医師の右腕となって働く「ドクターズクラーク」についてお伝えしたいと思います

 

ドクターズクラークって、どこで、何をするの?

「ドクターズクラーク」について調べると、わたしがかっこいいと感じた“診察室で診察内容を入力する”という仕事は、実は「ドクターズクラーク」の業務の中のほんの一部だったということがわかりました。

さて「ドクターズクラーク」という呼び方ですが、同じような業務内容であっても、病院によって呼び方が違うことがあります。 例えば、「医療クラーク」とか「ドクターアシスタント」とか、そんな風に呼んでいるところもあるようです。
というのも、この仕事には診療報酬に算定できる正式名称があり「医師事務作業補助者」と呼ばれる職種にあたります。これは「医師がおこなう事務処理作業を補助する職種」の人を指しています。

この仕事に就く人たちを、それぞれの部署や役割によって、病院ごとに呼び方が生まれているようです。ここでは「医師事務作業補助者」を「ドクターズクラーク」として呼びたいと思います。
肝心の仕事内容ですが、医師の指示のもとで行う以下の4つの分野の業務、と規定されています。 わたしが最初に見た業務は2番目の“診療記録への代行入力”だったということになります。

 

  • 文書作成補助

診断書や診療情報提供書(紹介状)などの文書作成

  • 診療記録への代行入力

電子カルテ入力や検査指示入力など

  • 医療の質の向上に関する事務作業

診療のデータ整理や院内がん登録などの統計・調査など

  • 行政上の業務

救急医療情報システムや感染症サーベイランス事業関する入力など  

 

ドクターズクラークは医療事務の仕事のひとつ

「ドクターズクラーク」が主にどのような仕事をしているかはお分かりいただけたかと思います。
正式名称からも推察できるように、事務作業に特化した専門的な仕事です。

ところでわたしたちは今、医療にかかわる仕事をめざして勉強していますが、それは大きいカテゴリーの中で言えば医療事務という職種をめざしているということになります。 医療事務という職種は、仕事の内容や業務を遂行する場などによって分けられています。
例えば、受付や会計といった「窓口業務」には医療や医学に関する知識や接遇が必要になしますし、患者さんごとに受けた医療行為を点数化しその内容がルールに則っているかを精査する「レセプト業務」には医療行為と保険点数・請求に関する知識が必要になります。

そうした多くの業務の中で、医師の事務作業を補助する専従者が「ドクターズクラーク」になります。
「ドクターズクラーク」も医療事務のひとつの分野なので、その知識やスキルを身につける際も、医療事務の他の分野の業務について勉強しておくことで、より深く理解し「ドクターズクラーク」の仕事にも役立てることができるのではないでしょうか。
ただし、「ドクターズクラーク」が国の定めによって配置する「医師事務作業補助者」として仕事をする場合は、業務の範囲が厳しく定められています。先にお話ししたように “医師の事務作業を補助する専従者” という規定があるため、それ以外の業務はできないことになっているのです。

ですから、知識やスキルがあるからといって、受付や会計、レセプトに関わる業務を実際におこなうことは認められていません。人手不足や勤務シフト移行時間帯などの理由があっても同様です。

 

ドクターズクラークになるために、必要な資格は?

医師の右腕となって、さまざまな事務作業をおこなうのが「ドクターズクラーク」ですが、国家資格が必要な医師や看護師などの医療スタッフと違い、意外にもその業務をおこなうために必須の資格はありません。


しかし、医師の指示のもとではあっても、これまで医師の仕事の範疇であった事務作業を代行するわけですから、医療や医学の専門的な知識、医療文書作成のためのスキルなど、総合的な高い能力が必要になってきます。

「ドクターズクラーク」の仕事をする上で、あらかじめこうした知識やスキルを身につけておくことは、きっとあなたの強みになると思いますし、自信にもつながるのではないでしょうか。

 

また、民間団体が実施する「医師事務作業補助者」の資格試験に挑戦することも、よい勉強になるようです。

こうした資格試験や検定試験に合格することは、知識やスキルが一定のレベルで備わっているという一種の証明にもなります。
なかには合格すると「ドクターズクラーク®」という称号がもらえる「医師事務作業補助技能認定試験」もあります。

 

ドクターズクラークとして働くということ

「ドクターズクラーク」になるためには、資格取得や講座などで得た知識やスキルがあれば、その行いの根拠や裏付けとなり、より自信をもって仕事をすすめていくことができるでしょう。
そもそも特別な資格が必要とされない「ドクターズクラーク」ですから、極端に言えば無資格でもその仕事に就くことはできます。

 

しかし国としては医師事務作業補助者の設置を勧めていることもあり、実務には知識やスキルのレベルが一定以上であることが求められます。国としては基本的には、入職6か月間を研修期間とし、その期間内に合計32時間以上の研修実施を要件としています。この研修は実務をおこないながら、職場内研修でも良いことになっていますから、採用された医療機関で研修を受講することもできます。しかし研修内容は決められていますので、「ドクターズクラーク」として即戦力として仕事を始めたい人や、実務に集中したい人など、入職前に研修内容を網羅した講座を受講することで、32時間以上の基礎研修に充てられる場合もあります。

このような措置に該当するかどうかについては、医療機関によって違いがあるようですので、一度調べてみてもいいかもしれませんね。  

 

ドクターズクラークは医療機関を救う?

約10年前に保険点数として制度が始まってから、多くの医療機関で「ドクターズクラーク」を設置・導入してきました。当初はこれまでになかった新しい職種ということもあって、なかなか浸透しませんでしたが、保険点数の改訂や導入に伴う効果の声が上がったことも、現在では多くの医療機関で導入されています。

「ドクターズクラーク」をうまく活用している医療機関ではその存在意義も大きく、たとえばカルテの代行入力によって時間短縮が外来診療時間の短縮につながり、スタッフの休憩時間を確保できているという事例もあるくらいなのです。  

 

ドクターズクラークの需要、高まっています!

では、「ドクターズクラーク」という職業がなぜ生まれたのでしょうか?
まず、医師が受け持つ業務負担が大きすぎることの弊害として、医療の質が確保されなくなってきたことや、医師が定着しないことが問題視されてきました。 これを解消するために、これまで医師がおこなってきた事務作業領域を、専門的な職種が代行することで、医師の負担を軽減し、医師でしかできない業務=診察などの医療行為に集中させ、医療の質を向上させることを目的として生まれました。

言ってみれば「働き方改革」の医療現場版というわけです。

こうした背景のなかで生まれた「ドクターズクラーク」ですので、今の医療現場をより働きやすい環境にしていくため、より質の高い医療にしていくために、非常に注目されていますし、その需要は高い職種であるといわれています。

一般の医療事務とはまた違った領域で、より医療に近い事務職として、「ドクターズクラーク」を目指すというのも、医療事務として働きたいあなたの選択肢にひとつに入れておいても良いのではないでしょうか。

参考
厚生労働省  参考資料1 医療機関における医師の労働時間の短縮に向けた取組について https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000467712.pdf